第17章 あなたの愛に完敗(光秀さん)(R18)
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結局光秀さんの誕生日プレゼントは、私を満足させるというわけのわからない理由で夜に作成するのが不可能になった。
そうしているうちに光秀さんは誕生日前に安土を離れしまい、完成したプレゼントはお部屋の文机にそっと置いておいた。
そうして10月半ばのある夜、光秀さんが私の部屋を訪ねてきた。
「光秀さん!?おかえりなさい!!」
半月ぶりに会う恋人に抱きつくと力強く抱きしめ返してくれた。
大好きな香りに包まれて寂しかった胸が温かくなった。
光秀「ただいま。長く留守にしたが何か変わったことはなかったか?」
「いえ、特には…。あ、光秀さんの文机の上に誕生日の贈り物を置いておきました!
見てくれましたか?」
光秀「玻璃の器に入った花のことか?なにか液体に浸してあったが…」
「あれはハーバリウムっていうんです。
乾燥させたお花や葉を純度の高い油に入れることで長い間お花を楽しめるんです。
光秀さんのお部屋は余計なものがないので、少し寂しいなと思って作ったんです」
シリコンオイルは存在しないから、佐助君のアドバイスを元に透明に近い植物油を手に入れて、何度かこして不純物を除去した。
光秀さんは部屋を空けることが多い。
季節の花を飾っても、見る機会もなく枯れてしまうというので女中さん達は花を飾らない。
「迎えてくれる花があると少し癒されませんか?」
光秀「そうだな。あの花はお前が乾燥させたのか?」
「はい。光秀さんと逢瀬に行った時に摘んだ花です」
光秀「何やら花を選別していたと思えば、贈り物の材料だったのか」
頭をポンポンと撫でられた。
光秀さんが居ない間に秋の野ばらを収穫して、ドライフラワーにしているところだ。
今回作ったハーバリウムが駄目になったらすぐ次を作れるように…。