第17章 あなたの愛に完敗(光秀さん)(R18)
(光秀目線)
『光秀さんが二人になれば良いのに』と舞は笑ったが、俺はたとえ妖術が使えたとしてもそれは嫌だった。
(仕事用の俺はいつ報われる?)
そこまで考えて己の変化に気付いた。
舞と出会う前は歴史の歯車になろうと、何も顧みることなく仕事をしていた。
まさに今舞が口にした『仕事用の光秀さん』が以前の俺だ。
だが今は舞を知ってしまった。
俺がどんな人間なのかを理解して、通常の人間ならば理解しがたい歯車としての在り方を傍で見守ってくれている。
その温かさを知ってしまったなら『仕事用の光秀さん』にはなりたくなかった。
なりたくないではなく、なれない。
(いつの間にか舞に毒されているな。だがそれも悪くない)
俺の進む道は以前のように暗くはない。
離れていても常に俺の心に寄り添い支えてくれる存在が、暗い道を仄かに照らしてくれる。
舞が帰りを待っていると思えば敵にとっては迷惑な話だろうが仕事もはかどるというものだ。
より冷静に、冷徹に、完膚なきまでに……
俺の下で喘ぐ舞に無情な行いを知られたくないが、全て耳に入らないようにするのは無理だろう。
(知ったところで舞の想いは変わらないとわかっているがな……)
時々想いを確かめたくなるのは男の性(さが)か。
離れた時期が長くなるほどに舞の気持ちを聞きたくなる。
(恥ずかしそうに『愛しています』というお前に、どれほど心奪われるか…)
「ぁ……、はぁ!」
直に夜が明ける。
何度も果てた舞は弱々しく喘いだ。
たいさいぼう分裂とやらをして欲しいと言わないよう執拗に抱き続けた。
舞を誰かと共有するつもりはない。
すべて俺のものだと舞に見えない刻印を刻みこむ。