第17章 あなたの愛に完敗(光秀さん)(R18)
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それから半刻ほど……
「だいたいわかってきた!明日の夜、もう一度やれば完成できそう!」
今夜はここまでにして気分を改めて明日やり直すことにした。
意外と早く作業が終わり、夜遅いとはいえ光秀さんなら起きていそうな時間だ。
「遅くなりますって言っておいて、一緒に寝れば良かったな…。
………今から行っちゃう……?」
多分起きているだろうけど、仕事明けだからもしかしたら寝ているかもしれない。
基本的に光秀さんは遅寝早起きなので寝顔を見たことがない。
無防備な寝顔を見てみたいという誘惑にかられた。
「えへへ」
思いついてしまったら顔がニヤついて治らなくなり、口元を緩ませたまま後片付けにはいった。
「やっぱり石の色は白でいこう。中に入れる花の色を変更して…」
明日のイメトレをしているわりに、光秀さんの寝顔を見たい一心で片付ける手は早い。
寝間着に着替えて早速自室を出発した。が……
「暗いな。灯りを持ってくれば良かった」
御殿は寝静まっていて廊下を歩いている人間は居ない。
現代の感覚で部屋を出てしまい、濃い闇に尻込みしながら歩いた。
「お化けが出そう……」
寝ている皆を起こさないようにソロソロ歩いていると、雨戸の隙間を通る風が、ひゅうぅと笛のように鳴っている。
日中から風が強くて、今はそれに加えて雨も降っているみたいだ。
真っ暗な廊下と風音が得体の知れない不安を呼んでくる。
「光秀さんの部屋まで遠いな…」
ソロソロ……
ヒタヒタ……
「ん?」
(いま、何か聞こえたような……)
ソロソロと足を運ぶと、風の音にまじりヒタヒタと足音が聞こえた。
(誰か居る…?)
耳をそばだてても風で雨戸がガタガタと音をたてて、はっきり聞こえない。
半信半疑で足を速めると、背後からハッキリと人の足音がした。
御殿の人だったら話しかけてくれるはずだ。
(怖い!お化け!?泥棒!?)
駆けだすと後ろの気配もピタリとついてきた。
恐ろしくて後ろを向けず、ひたすらに走った。
廊下の角を曲がると、明かりが落とされた光秀さんの部屋が見えた。
寝ているところに不審者と一緒に飛び込んだら、流石の光秀さんも驚くだろうけど構っていられない。
私では不審者を退治するなんてできないんだから。