第16章 輝く世界(慶次)
――――
目にしたら狂いそうだった赤色。
目が見えるようになって間もなく、私はその色を見ると胸がキュッと締め付けられるようになった。
慶次の髪色と着物は赤色だ。
赤色が見えると、慶次が会いに来てくれたんじゃないかって心臓がうるさくなる。
もっと見たい。見せて欲しい。
慶次のいろんな顔。いろんな気持ち。
だって私は慶次のことが好きだから。
ちょっと優しくされただけで好きになっちゃうなんて単純だよね。
でも私が慶次から貰った優しさはちょっとじゃなくて両手に抱えきれないくらい沢山だった。
『あの時』を思い出す恐怖におびえ、人の心なのか自分の心なのかわからないけれど、全部に不審を覚えて、ひねくれた物の考え方しかできなくなっていた。
慶次の存在と沢山の優しさがいつの間にか私を包んでくれていた。
ひ弱な心を支えて強くしてくれて、だから目を開けても狂わずに済んだ。
慶次「舞、迎えに来てやったぜ」
「また上から目線…」
慶次「素直じゃない口だな?俺が来るの楽しみにしてたくせに」
「私は別に楽しみにしてなかったよ。慶次の方が楽しみにしてたんでしょっ」
慶次「可愛くねぇお姫さんだな。さ、行こうぜ。茶屋に新作の大福が出たんだってよ」
「ほんと!?行くっ!!」
慶次「お前……傾奇者もびっくりな身がわりの速さだな」
「えへへ、お餅大好きだもん」
今、お針子さんに教えてもらいながら慶次のために着物を縫っている。
初めて着物を縫うから時間がかかっているけど、渡す時に気持ちを伝えたい。
私がそう思ってることさえ見透かされていそうだけど、知らないフリをしてくれるのは優しいからなのか意地悪なのか…。