第16章 輝く世界(慶次)
慶次「俺の素を知っているのはもう一人居るが、そいつとは犬猿の仲だ。
舞に素を晒したのは、前も言ったがお前があまりにも俺のことを聖人扱いするから気持ち悪かったからだ。自分の素直さに気付いていないところも頭にきてたしな」
「気持ち悪いって…酷いなぁ。私が人を見る目がないって怒ってたの?ずっと?」
慶次「別に、本気で怒っちゃいないが呆れてたかな」
「さっきから私の繊細な心にブスブス槍が刺さってるんですけど…」
親友や家族にでさえこんなにズバッと言われたことがなくて、頭にドヨンと雲がかかった。
慶次は『繊細?舞が?』とお腹を抱えて笑っている。
「光秀さんにもよく言われる…。鈍感で、すぐ騙されて、世間知らずの馬鹿娘だって」
言葉の操り方や意地悪の手法は全然違うけど、慶次も意地悪タイプで私を馬鹿娘と呼びそうな気がした。
慶次「へえ、光秀に可愛がられてるんだな」
「どう捉えればそうなるのよ」
慶次「あいつなりの愛情表現だ。最後の馬鹿娘ってのに気をとられているようだが、舞のこと理解してくれてるだろう。
光秀はそこらへんの女に手当たり次第に口をきく男じゃない。それなりにお前を気にかけて、理解してくれてんじゃないのか?」
「そうなの?もう…慶次も光秀さんもわかりにくいよ。もっと素直になったら?」
慶次「はっ、無理な話だな。猫をかぶるのは癖みたいなもんだからなっ!」
にかっと笑った顔は太陽みたいに明るい。
仲間に素を隠している理由は『癖みたいなもの』で片付けられてしまった。
「どんな悪癖よ。まぁ…でも素で居られるのは良いことだよね」
私の前だけでしから素になれないなら、仕方ないから許してあげる」
慶次「舞こそ上から目線だなぁ?」
「……ふっ、ふふ!そうだね、あはは、慶次の傍に居たら似ちゃったかな」
慶次「言ったな?」
「いたっ!デコピンしないでよっ!」
慶次「でこぴんってなんだ?」
「ふーん、だ!慶次になんか教えてやらないんだから」
慶次「じゃあ、でこぴん100発で手を打とうじゃねぇか」
「なっ!?わかってんじゃないっ!
このっっ、ひねくれものっ!!!」