第16章 輝く世界(慶次)
慶次「……やっぱり舞は馬鹿正直な性格だな。
目が開いたら今まで以上に気持ちが表に出てきてるぞ」
不敵な表情は何もかも見透かしている気がした。
焦った私は桃色の想いを無理やり無色透明に染めて、さっきよりもずっと奥深い場所に隠した。
脳内で大きな扉がバタンと閉じて、鍵がガチャリとかかった。
「……それって褒めてる?けなしてる?」
素知らぬふりをして会話を続けるけれど、慶次は何やら含み笑いをしている。
真っ直ぐ届く金色の視線は、扉の奥に隠したものを見透かしている。
隠しても暴かれる感覚にソワソワと落ち着かなかった。
慶次「前に言ったろうが。愚かだとも羨ましいと思うって。
そんなにポンポンと気持ちを言える舞が羨ましいぜ。一応これでも褒めてるつもりだ」
(慶次だって今はポンポン言ってるのに、変なの)
「わかりにくいなぁ。でも、本当にありがとう。
今の私が居るのは慶次のおかげだよ。支えてくれてありがとう」
慶次の手をギュッと握った。
慶次から触れてくることはあっても、私から触れることはなかったから驚いた顔をしている。
「慶次、いっぱい優しくてくれてありがとう。
思いやりも気遣いも、人の目線に立って物を考えられるのも凄いことだよ?
そうでありたいと思っても、なかなかできることじゃない。
私は慶次の優しさが羨ましいって思ってる。
ちょっと面倒臭い女だけど、これからも仲良くしてくれたら嬉しいな」
金色の目が猫みたいにスッと細められた。
慶次「……安土のお姫さんがどんな奴かと楽しみにしていたが、相当いかれてるな」
「はっ!?仲良くしてって言ってるのに喧嘩ふっかけてくるってどうなのよ!?」
慶次が耐え切れないというように、ブッと吹き出した。
慶次「ふっかけてねえよ。仕方ねえから『仲良く』してやるぜ?」
「その上から目線をやめて欲しいんですけど」
慶次「いーだろ。舞の前でしか素をさらす相手がいねえんだ。
好きにさせろよ」
「え、私だけなの?なんで?」
素を隠していると前に聞いていたけど、私以外にも誰か居ると思っていた。