第16章 輝く世界(慶次)
慶次「あ?他に誰が居るっていうんだよ」
目の前のイケメンが言葉を発すると、慶次の声がした。
(慶次だ…うん…。そうだよね、他に人は居ないし、声がそうだし…)
「………」
慶次「どうした。お館様みたいにイイ男じゃなくてガッカリしたってか?」
「違うよっ。クマみたいな人だと思ってたから、お洒落で格好良くて…びっくりした」
慶次は身体を見下ろして着物を見た後、眉間に皺を寄せた。
慶次「クマみたいとは随分だな」
「見えなかったんだから仕方ないでしょ。しかもちゃんと『お洒落で格好良い』って言ったじゃない。でも本当びっくり…」
しげしげと慶次の顔を見つめると、ふいと顔を逸らされた。
慶次「急に目を開けられてびっくりしたのはこっちだ。
そんなに大きく開けたら目が落っこちそうだ、そろそろ閉じろ」
「目が落ちるわけないでしょう?」
(慶次ってこんなムチャクチャなことを言う人だった?)
おかしいなぁ、とクスクスと笑ってしまった。
慶次「良かったな…って言ってもいいのか?」
「え?」
慶次はいつの間にか私に向き直っていた。
慶次「舞は見えなくても良いって思ってたんだろ?
お前が喜んでいないなら、俺の価値観で物を言っても傷つけるだ」
強引に距離を詰めてくる時もあったのに、大事なところでは人を気遣ってくれる。
凄く繊細な人だと思った。
命を取り留めて『奇跡』だ、『おかわいそうに』と言われて傷ついていた私を知らないはずなのに…。
胸がフワフワと軽くなり…………桃色に色づいた。
「気遣ってくれてありがとう。以前は見えなくても良いって思っていたの。
でもね、今は凄く嬉しいって思ってるよ。慶次の顔を見られて良かった」
慶次が意地の悪い笑みを浮かべた。
慶次「へぇ、舞は俺のことよっぽど好きなんだな」
「はっ?そんなこと言ってない!
じ、自意識過剰なんじゃないのっ?」
色づいた胸の内を隠して悪態をついた。