第16章 輝く世界(慶次)
慶次「どこをどう見ても素直な女が、自分でひねくれてるって言うし、俺のことを明るくて真っ直ぐだなんて言うからおかしくてな。
ひねくれてるってのは、俺みたいな人間のことだろ?」
「んー…そうかな?根っこの部分は真っすぐで優しい気がするよ?
本当にひねくれてどうしようもない人は前なんか向かないし、人を前に向かせる力もないよ。慶次だって自分のことを悪く言わないで、胸を張れば良いじゃない」
慶次「ばーか、そんな風に受け取るのは馬鹿正直な舞だけだ」
「む、馬鹿って言った?しかも2回も!」
慶次「ああ、言った」
きっと意地悪な顔で笑っているんだろう。見えないけど声のニュアンスでわかる。
「もう~~~!自分の部屋に戻る!言っておくけど付いて来ないでよ。
歩く練習をしてるんだから」
立ち上がってしっかりとした足取りで襖まで歩いた。
最近は目が見えなくても方角を把握できるようになって、自分の進歩がちょっぴり誇らしい。
廊下に出て、慶次にお暇の挨拶をしようと身体の向きを変えた。
慶次「三成みたいに柱に頭をぶつけんなよ」
「大丈夫!杖を貰ってから、ぶつかったり転んだりする回数が凄く減ったから!」
慶次「そりゃあ良かったな。気をつけて帰れよ」
「また明日も来ていい?」
慶次「明日は登城しない。俺に会いたいなら御殿に来いよ」
「御殿は遠いから流石に一人じゃ無理だよ…。じゃあ明後日ね」
目が見えない私がフラフラ歩き回ったら、護衛についた人達に余計な気を揉ませてしまうだろう。
それはちょっと申し訳ないので出来ない。
慶次「最近似生が舞に会いたがって、イノシシの如く走り回って困ってんだけどな」
「え?ほんと?じゃあ、行こうかな」
ぷ、と吹き出すのが聞こえた。