第16章 輝く世界(慶次)
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鍛錬場に連れて行ってくれた後も、慶次は私の面倒をよく見てくれた。
何かと理由をつけては毎日外に連れ出してくれて、紅葉が始まっているとイチョウの葉を手に握らせてくれたり、野菊が咲いていると匂いを嗅がせてくれた。
御殿に招待された時は、何も知らずに座っていたら着物の裾を何かに引っ張られた。
「慶次…?」
違う気がして手を伸ばすと、ヒクヒク動く鼻のようなものを押し付けられた。
犬や猫にしては鼻が大きい。
慶次「袖を引っ張ってんのは俺じゃない。何が居るかあててみな」
「そんな無茶な…」
慶次「簡単だ。触っても噛まないから触ってみろよ」
「え?え?」
ぐいと手を引かれて、おっかなびっくりで触ってみる。
(は、爬虫類系じゃないよね…)
肝を冷やしたのは一瞬で、手に触れたのはヒンヤリとした身体ではなく、ちゃんと温かかった。
「んー…毛はそんなに多くないね。産毛程度?
犬や猫より大きいけど…そんなに大きくないね」
猫科の動物のような機敏性はない気がする。
『うーん』と考えていると、その生き物は私の膝に前足を乗せた。
ぶっ、ぶっ、ぶー
「……」
(い、今、ぶーって言った!!)
あっけなく答えがわかってしまって、吹き出した。
「……ぷ、あはは。ブタさんだね?
ブタを触ったのはじめて。もっと触らせて?」
まあるいボディをよしよしと撫でてあげる。