第1章 日ノ本一の…(上杉謙信)(R-18)
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兼続「尚善(なおよし)が回復するまで弟を寄こすと文が届いていたが、お前がそうなのか」
「はい。弟の尚文と申します」
兼続「随分と幼い者を寄こしたものだ…」
「申し訳ありません」
兄上と二つしか違わないのだけど、男性にしては細い身体だからそれ以上に幼く見えるのかもしれない。
兼続「謝る必要はない。だが代理の者に本格的に小姓の仕事を覚えてもらうわけにはいかない。他の小姓について雑務をこなしてもらうことになる。それで良いか?」
「はい、なんでも致しますので、よろしくお願い致します」
兼続「謙信様がお手隙になられたら目通りをしてもらうことになる。
呼ばれたら直ぐにこの部屋に来るようにしろ」
「はい」
兼続「誰か居るか?この者に城の案内をしろ」
廊下に控えていた女中がお城の中を案内してくれることになった。
「よろしくお願いします。忙しいところ煩わせて申し訳ない」
家ならば『忙しい時にごめんね』の一言で済むのに、口調まで変えなくてはいけずにまどろっこしい。
女中は目が合うと何故か顔を赤らめて返事をした。
「?」
(特におかしなことを言ったつもりはないのに、どこか変だったかな、私……)
とにかく怪しまれないよう行動しようと、女中のあとについていった。