第15章 secret word(政宗)
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それから一刻後
胸を騒がせながら作った煮物は、教えてもらった時よりも少しだけ甘くなってしまった。
政宗「ん……この間よりか少し甘めの仕上がりだが、良いんじゃねぇの?」
味見する政宗の口元を見ていられない。
今夜私が『え』をしたら、その色っぽい唇で貪られるかと思うと…
肌を伝う舌の感触を思い出し、ゾワリと鳥肌がたった。
(こんな想像してモヤっとするなんて欲求不満なのかな…)
政宗「どうした?料理酒でも舐めたような顔してるぞ?」
「な、舐めてないよ。ただ政宗のことを考えながら煮物を作ったら甘くなっちゃって…」
目の前に居るのに恋しい気持ちが止まらない。
その広い胸に飛び込んで、今すぐ抱きしめて欲しい。
「ごめん、やっぱり作るんじゃなかったね…」
言葉と思考がズレすぎてワケわかんなくなってきた。
ここには人がたくさん居るのに何を考えているんだろう。
政宗「……美味くできているが、ここの連中には食べさせられねぇな」
そう言って政宗は厨番の人に煮物を御殿に届けるように命じた。
美味しいって言ってくれたのに宴に出さないなんて、そんなに甘すぎただろうか。
政宗「俺を想いながら作って甘くなったんなら、原因は砂糖じゃなくてお前の気持ちだ。
食べる権利は俺にしかないだろ?」
(なにそれ!『愛情込めて作りました』みたいな??)
(好きとか、ドキドキするとか、カッコイイとか、そう思いながら作ったけど……)
それら全部が愛情に結びついているってわかってるけど、それが料理の味を変える調味料にはなりえない。
「なに言ってるのよ。砂糖だよ、それしかないって。
いくら私が政宗のこと好きだからって……」
そこまで言いかけて、いかに恥ずかしいことを口にしているのか気づいて口を閉じた。
政宗「舞が俺のこと…なんだって?」
わかっているはずなのに言わせようとしてくる。