第15章 secret word(政宗)
「『え』は夜ね…。その代わり『う』なら良いよ」
精いっぱい強がって妥協案を提示すると、政宗は小さく笑って軽い口づけをくれた。
(唇が重なった一瞬が永遠になれば良いのに…)
一時も離れたくないなんて相当政宗にほだされている。
今まで恋人にこんなに夢中になったことなんてなかった。
どんなに好きな人でも『一人の時間がほしいな』『趣味の時間は大事♪』なんて思ったものだけど、政宗に関してはそうならない。
政宗は『好きなことして過ごせ』って束縛する素振りがないのに、私は自然と政宗の傍にいる。
政宗の傍に居ることが『好きなことをして過ごしている』になっている。
うざったく思われないか時々心配になるけど、政宗はいつも『よく来たな』って迎え入れてくれるから、それに甘えてしまっている。
政宗「夜…楽しみにしてる。飲み過ぎて寝るなよ」
「政宗こそっ!光秀さんにお酒を盛られないように気をつけてよ!」
政宗「はいはい」
政宗が厨を出ていった後、煮物の仕度に入る。
里芋の皮が途中まで剥かれた状態で置いてあり、包丁を見ると政宗のものだった。
「……」
包丁の柄を握るとドキドキした。
好きな人が使っている物を手にしてときめくなんて子供みたいだ。
「もう…政宗があんなことするからだよ。ドキドキして困る」
甘酸っぱい気持ちに動揺しながら、包丁を動かした。