第15章 secret word(政宗)
政宗「教えてやる前に口を開けろ。『あ』だ」
「あーん?」
それなら良いかと口を開けると、青菜のおひたしを入れられた。
政宗に口に何かを放り込まれるのは慣れているので、もぐもぐ口を動かして飲み込んだ。
「うん、美味しかった!」
政宗「じゃあ、次は『いー』してみろ」
「それはちょっと…。今食べた青菜が挟まってたら恥ずかしいじゃない」
政宗「仕方ないな。『う』なら良いだろ?」
政宗にしてはあっさりと諦めたなと思いながら『う』の口にした。
政宗「隙あり」
(え?)
少し突き出した唇をぺろっと舐められ、その後に軽く唇を吸われた。
「!!!」
触れ合った唇に言葉を失うと、政宗は不敵な笑いを浮かべている。
「こんなとこで何すんのよっ」
両手で口元を覆って周囲を確認した。
厨番の人達は料理の下準備に没頭していて、気づいた人は居ないようだった。
ひそひそ声で抗議しても政宗はどこ吹く風だ。
政宗「気にすんな。次は『え』だ」
「何が『気にすんな』よ!気にするよ、普通!」
ブツブツ言いながら、それでも『え』と、やってしまうあたり従順な性格だ。
政宗「そういうとこ、やっぱ可愛いな」
艶やかに細められた眼差しと、腰に回った腕の感触に心臓がドキリと音をたてた。
何をされるのかと警戒した時にはもう遅く、『え』にした際に覗き見えていただろう舌を奪われた。
「んん!?」
腰に巻き付いた腕に力が加わり、グイっと身体の向きを変えられた。
私の後ろは壁になり、政宗の大きな身体が口づけを交わす私達を覆い隠してくれている。
「ん…」
柔らかく舌を食(は)まれ、『え』の口をやめられなくなった。
(政宗……)
思考が蕩けて、今の状況を忘れてしまいそうになる。
忘れてなんかいないけど…政宗なら何とか誤魔化してくれると全幅の信頼を寄せて口づけを受けた。