第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
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お盆をすぎても暑さが緩まず、これでもかと暑苦しく蝉が鳴く八月末の昼下がり。
「今日も暑いな…」
例のお茶屋さんで涼をとっていると、待ち合わせしていた謙信様がやってきた。
数か月ぶりの再会なのに不機嫌そうにしている理由はわかっている。
謙信「む、今日も舞に先を越されたな」
「私もたった今来たところですよ」
謙信「本当か?」
空っぽになっている湯呑を見て、疑わしいと言わんばかりに眉を寄せている。
「本当です。暑いので飲み干してしまっただけです」
謙信「ならば良いが…。おかわりを頼んでやる。
ああ、それと佐助が…」
「佐助君がなんですか?」
謙信様が言いかけて口を閉じた。
その理由は店先に立っている白い影だ。
光秀「最近越後に引っ込んでいると思えば何をしに来た?」
謙信「別に俺がどこで何をしようと明智に教える義理はない」
お互いに凍えるような視線を交わし、間に挟まれている私はオロオロと二人の顔を交互に見た。
「えっと…人目もありますから喧嘩はやめましょう?」
光秀「喧嘩などではない。安土に潜んでいる謙信を見つけたからには捕らえるのみだ」
「っ」
仲裁した私に光秀さんは鋭い視線を放った。
二人は敵同士だ。
この一年で、信長様と謙信様は小規模の戦を何度もしている。
(一年前の夏休み気分でいちゃ、駄目だってわかっていたのに…)
胸の痛みに唇を噛んだ。
謙信「ほお?鉄砲の手練れとは聞いているが刀の噂は聞かないな。
この俺に勝てるとでも思うのか?」
まさに一触即発の空気の中、店の外では突然雨が降りだした。