第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
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こうして勉強に専念することにした私は、和装の知識を深めながら、光秀さんに戦国時代の常識、姫修行の指導をしてもらった。
(次は馬術の指導だっけ。流鏑馬かぁ、難しいんだよなぁ)
茶の湯の指導で使っていた袱紗(ふくさ)を仕舞い、お茶の先生に挨拶してから自室へと向かう。
廊下を早足で歩く時も優雅さを忘れない。
内心で愚痴っているなんて誰もわからないだろう。
女中「姫様、お着替えの準備は整っております」
「お願いします。あと15分くらいしかないから急がないとっ」
女中「15分…?」
「っ!ごめんなさい、何でもないです」
女中「ふふ、お急ぎなのですね。わかりました」
「ありがとう」
忙しい日々を送る中、謙信様との文が心癒してくれた。
謙信様が髪をよく拭いてあげていたのは、あの時お茶屋さんに迎えに来た兼続さんだったことがわかった。
兼続さんがまだ小さかった頃、鍛錬のあと汗の始末をせずに風邪をひいてしまうことがあったから、よく拭いてあげていたそうだ。
何でも完璧にこなしそうな男性だったけど、小さい頃は可愛らしい面があったようだ。
佐助君が新たに閃光弾を開発して、鍛錬をしようとすると逃げられてしまうとか、幸村が庭に住み着いているうさぎを踏みつけそうになったから成敗してやったとか、ちょっと心配になる内容も書いてあって、でもそれが春日山の日常風景みたいだった。
「いつか春日山城に遊びにいってみたいな」
読み終わった手紙を畳んでいると手首にはめているバングルとブレスレットが静かに揺れた。
あの夏休みから約1年。
光秀さんの鬼のようなレッスンのおかげで、立ち居振る舞いが淑やかになったと褒められることが多くなり、短剣も扱えるようになった。
針子の仕事も軌道に乗って自室に持ち帰ることもしょっちゅうだ。
戦国時代で生きていく基盤が整っていくのを感じながら、心の中では密かな想いを暖めている。
まだ定まることはないけれど、二人に対する想いはあの夏休みの時よりもずっとずっと大きくなっていた。