第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
店先に立っていた光秀さんが店内に足を踏み入れた…その時。
突然の稲光に店内の人達がビクリと身体を震わせた。
光に遅れること数秒後、店の屋根を直撃したらしい雷が私の傍に落ちた。
(ひえっ!?感電死する!!!)
「謙信様っ」
思わず隣に座っていた謙信様に縋り付くと、謙信様は素早く私を掴まえてその場を退いた。
謙信「しっかり掴まっていろっ」
光秀「舞っ!」
珍しく慌てた様子の光秀さんが走り寄ってきて、私の手を掴んだ。
フワ……
「え…?」
(ワームホール!?)
謙信「っ、しがみついていろっ、離れるなよ」
「はいっ」
謙信様が両腕で抱きしめてくれて、私も背中に腕を回してしがみついた。
光秀「舞…!」
光秀さんが背後から謙信様ごと抱きかかえてくれた。
二人に守られるようにして酷い眩暈と戦った。
心強い存在を近くに感じながら気持ち悪さと戦っていると、地面に足がついた。
ふらついた身体を謙信様と光秀さんが支えてくれた。
恐るおそる目を開けたそこは………
「ここ……どこ…」
明らかに日本人ではない人達が居た。
着物を着た私達を「Oh!SAMUAI!」と目を瞬かせて、中にはスマホで撮影を始めている人も居る。
街路樹は南国風だし、標識らしきものは全て英字だ。
「日本じゃない…。どうしよう」
辺りを見回していた二人も私の発言に驚いている。
謙信「佐助がワームホールが開くと言っていたのだ…。
毎度の事ながら伝えるのが遅くなってすまない」
申し訳なさそうに謙信様が懐から文を取り出した。
一年前と全く同じ流れにげんなりする。
佐助『〇月×日正午、高確率で安土にワームホールが開きそうだ。去年と同様、二日後に同じ時間、場所にワームホールが開くだろうから、里帰りを楽しんでくると良いよ。
謙信様をご両親に会わせる良い機会になるんじゃない?』
里帰りどころじゃない。ここはどこの国だろう。
勝手に謙信様との関係を誤解しているし。
「佐助君~~~~。手紙じゃなくて一緒に来てよ~~~!」
一年間の姫修行はどこへやら、佐助君の手紙を抱きしめて空に叫ぶと、嘆きの声は爽やかな異国の風にさらわれていった。