第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
「謙信様が私の髪を拭いてくれた時に凄く慣れている様子だったんですけど、どなたか恋仲の方が居るんじゃないんですか?」
謙信「女は傍におかないと言っただろう。
髪を拭き慣れていたのは、昔よく…」
「昔よく…なんですか?」
昔よく……女の人の髪を拭いてあげていたとか?
お風呂上りの女性の髪を拭く関係。あらぬ想像をして顔をしかめた。
謙信「何を勝手に誤解している?俺が昔よく髪を拭いてやっていたのは…」
?「謙信様、そろそろ出立のお時間です」
唐突に私達の会話に入り込んできた声に飛び上がった。
(い、今、大事なところだったのに!)
いつの間にか謙信様の背後に1人の男性が立っていた。
少々キツイ眼差しとヒヤリとした雰囲気が、どことなく謙信様に似ていた。
謙信様は一瞬そちらを見てすぐに私に視線を戻した。
謙信「時間がなくなってしまった。今の話は手紙で教えてやる」
別れを惜しむように髪を数度梳くと、謙信様は立ち上がった。
(越後に帰っちゃうんだ)
何とも言えない物悲しさに胸の前でキュッと手を握った。
「いっぱいお手紙書きますね」
謙信「舞の顔を見られなくなるのは酷く物寂しいが、越後で文を待つ楽しみができた」
「筆で字を書くのが苦手なので読みにくいかもしれません。
今のうちに謝っておきます」
謙信「気にするな。必ず返事を書くから待っていろ」
謙信様はゆるりと目元を細めて微笑んだ。
謙信「できるならば手首の飾りはずっと身に着けていてくれ。
舞が俺を忘れないように」
「え…?ふふ、はい、わかりました」
胸の前で握っていた右手に左手を添えて返事をすると、謙信様は満面の笑みを浮かべて帰っていった。