第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
謙信「ならば俺のところに来るといい。
舞が愛らしいと思ったその時に言ってやれば、どんな時に、どんな風に愛らしいか伝わるだろう?」
(近い近いっ!!!格好良すぎて死んじゃうっ!)
「お誘いは嬉しいですけど急すぎてそれはちょっと…」
謙信「理解したいと、理解して欲しいと思っていても、毎日顔を合わせる明智に比べれば舞と過ごす時が、俺には圧倒的に足りない」
端正な顔が悔しそうに歪み、見ているこちらが苦しくなるようだった。
なんとかしてあげたい。
「そうだ、謙信様!文通しましょう!」
謙信「文…通…?」
「ええ、500年後では、会えない時はスマホで手紙のようなやりとりするんですよ。
とりとめのないことで良いので、なんでも書いてください。
あぁ、でもこの時代に郵便屋さんって居ませんよね。どうやって届けてもらおうかな……」
謙信「ゆうびんやが何か知らんが、俺と文のやり取りがしたければ問題ない。
この茶屋の数軒先に食事処があるのを知っているか?」
「はい。魚介料理が評判のお店ですよね?」
謙信「そうだ。その店に右目の下に黒子(ほくろ)のある男が働いている。
その男に文を託せ。天気に恵まれれば数日で越後の俺のところに文が届く」
「…その男の人は謙信様の関係者だったりします?」
謙信「軒猿だ。敵地に紛れて諜報活動をしている」
「!」
さらっと機密情報を公開されて、受け取った情報の扱いに困る。
安土で有名な食事処に謙信様の部下が居るなんて…とにかくバレないよう、文を預ける時は慎重に行動しよう。
「ただの文通に優秀な部下を使って良いんですか?」
謙信「舞とのやり取りは『ただの文通』などではない。
いい加減察しろ」
バングルを付けた右手を持ち上げられ、手の甲に薄い唇が寄せられた。
「え…」
手の甲に口づけられ、柔らかな感触に目を瞠った。
(謙信様にキスされた!?)
「どうして…」
謙信「それは自分で考えろ。
答えを導き出すまで俺のことだけ考え悩めば良い」
異性の手の甲に口づけするなんて、西洋ならともかく日本では理由なんて一つじゃないだろうか。
謙信様の好意に気が付いて顔が熱くなった。
(あれ、でも…)
ひとつ気にかかることが…