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☆姫の想い、彼の心☆ <イケメン戦国>

第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)


(そうだ、謙信様にも旅の思い出を渡さなくちゃ)


「あの」

謙信「それで」


同時に口を開き、噤んだ。


「遮ってすみません。先にどうぞ」

謙信「いや、俺は後で良い。舞は何を言おうとしたんだ?」


声色にまで甘さが滲んでいる。
夏休みが終わっても謙信様の態度が元に戻ることはないみたいだ。


(『メンタルがズタボロになる』なんて言ったから、気にしてくれているのかな)


私に言われてじゃなくて自然とそうなら凄く嬉しいことだけど、どっちなのかわからない。

隣に座っている謙信様は相変わらず格好良くて、これで冷ややかさが消えて優しさ溢れる人になったら凄くモテそうだ。


「これ…旅の思い出にと買ってきたものです。
 良かったら受け取ってもらえませんか?」

謙信「あれこれ買っていたのはてっきり安土の連中に選んでいたのかと思っていたが」

「現代の物を持ち込むのはどうかなと思って、皆には箱入りのクッキーを一枚ずつあげるだけにしたんです」

謙信「開けてもいいか?」

「どうぞ。たいしたものではありませんけど」


謙信様が丁寧に包みを開け、中からアクアリウムの置物を取り出した。

プラスチックでできた小さな四角の空間には、透明と水色のオイルが二層になって揺れている。
オイルの上には作り物のイルカや熱帯魚がプカプカ浮かび、下の方には固定されたチンアナゴが顔をのぞかせている。


「謙信様は水族館でアクアリウムの水槽の前から動かなかったので、お好きなのかと思って選びました。
 大きいと人目に付きすぎるので小さめのものを選びました」


謙信様は珍しそうに置物を振ったりひっくり返したりしてオイルの動きを見ている。


謙信「不思議なものだな…」


混ざり合ったオイルは時間が経つと元の色に戻る。
子供のようにそれを繰り返す様子が、なんだか可愛らしかった。


謙信「これならば戦の最中にも眺めて英気を養えるというものだ」

「………できれば戦の最中ではなく、寝る前や、仕事中に見て癒されて頂きたいんですけど」

謙信「ふっ、冗談だ。これを見れば安らいだ気持ちになろう。
 毎夜寝る前に眺めることにする」

「ふふ、気に入ってくださって良かったです」


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