第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
差し出されて、つい何も聞かずに受け取ったそれはズシリと重かった。
「これって……」
謙信「立て替えてもらった分の金子(きんす)だ。あっちでは世話になったな」
「いいえ、たいしたことはしていません。
それに巻き込んでしまって申し訳ないと思っているので、こんなには頂けません」
私の主張は謙信様が緩く首を振ったことで退けられた。
謙信「受け取ってくれ。俺の気持ちも入っている。
戦国の世では見られない物を沢山見させてもらった」
「私は案内しただけですよ…?」
海が綺麗なのは自然の力だし、お酒や料理がおいしいのは造り手あってのもの。
眺めが良かったのはホテルが良かっただけだ。
言葉は悪いけれど、私はお金を出しただけだ。
謙信「あの時、舞が俺の手を挙げてくれなければイルカとは触れ合えなかったぞ?
梅干しやパフェを食べさせてくれた時は、格別に美味だった」
「う……『あーん』したのは酔った勢いですよ」
恥ずかしいことを思い出してしまい、頭を抱える。
謙信様の笑みが深くなり、甘い視線に耐えられなくなって俯いた。
最近こうして視線を受け止めきれない場面が多いような気がする…。
謙信「舞がのびのびと振舞う様は、見ているこちらが癒されるようだった。
舞が笑い、目を輝かせ、はしゃぐだけで、俺も同じように楽しく感じていた」
巾着をのせた私の手に謙信様の手が伸びてきて、上から握りこませた。
謙信「何にも代えがたい時を過ごさせてもらった。
ありがとう、舞」
優しく微笑まれては多すぎるお金を返すのも気が引けた。
光秀さんと一緒で、多く貰い過ぎた分はあとで何か縫い上げてプレゼントすることにした。
「お礼を言われるようなことはしていませんけど…謙信様に楽しんでもらえて良かったです」
巾着ごと受け取って、落とさないように懐の奥に押し込んだ。