第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
光秀さんの着物からお香の匂いと、男の人の……光秀さんの香りとが混ざり合って、物凄く悔しいけど、とっても良い香りがした。
(光秀さんってこんなスキンシップしてくる人だった!?)
氷の魔法をかけられたように身体がカチンコチンに固まった。
光秀「ふむ。モッチリはしていないが抱き心地は悪くない。
妙に力が入っていなければもっと柔らかいだろうに、残念だ」
寸胴かどうか確かめると言ったわりに、そのあたりの感想はなかった。
胸板を両手で押し返そうとしても、そう簡単に逃げられなかった。
「モッチリって……それはアザラシの抱き心地を想像して言っただけですよ。
いきなり抱きしめられたら硬直するのは当たり前ですしって…離してくださいっ!」
結構強い力で突っぱねたのに、びくともしない。
光秀「謙信にも買ってきたのか?」
「旅の記念品ですか?もちろんです」
光秀「心優しいお前ならばそうだろうな」
気のせいか落胆しているように見えて、それが何でなのかわからなくて困ってしまった。
「お揃いは嫌がると思って、違う品を買ってきましたので安心してくださいね?
でももう一つの包みは謙信様と、私と三人共通の品なんです。嫌だったですか?」
そう言うと光秀さんは腕を解いて、二つ目の包みを開封している。
(やっと解放された…)
頬に手を当てると抱きしめられた動揺で火照っていて、頭がクラクラする。
二つ目の包みには小瓶に入った砂と写真を一枚入れておいた。
「私達がシュノーケリングした海の砂と、スタッフの方が水中から撮ってくれた私達の写真です」
写真にはサンゴ礁付近で熱帯魚を見ている私達3人が写っている。
「ゴーグルとシュノーケルを付けていますし、誰が、何をしているかわからないでしょう?
この砂は雑貨屋さんで見つけたんです。あの時代のものはこちらでは凄く目立つので砂なら良いかなって。
他の人が見ればただの白い砂ですけど、私達にとってはそうじゃないから……」