第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
光秀「よく似合っている」
「お店で見た時に思ったんですが、この白い石は光秀さんみたい」
白と灰色がマーブルになっている石を見た。
光秀「そうか?」
「白いのに白くないところが」
光秀「ふっ、なんだそれは」
「白くないけど白い人だなって、ずっと思っていますよ?
こう言うと光秀さんはいつも否定しますけどね」
微笑を浮かべた唇は、いつもの意地悪じゃなくて嬉しさを滲ませているように見えた。
光秀「どう思っていようとかまわないが、無防備な姿ばかりさらしていると俺も白ではいられなくなるぞ」
「?」
出会ってから今まで、しょっちゅう『無防備だ』と言われ続けてきた。
今更どうなるっていうんだろう。
首を傾げつつ、私も荷物入れの中から二つ、包みを取り出した。
「実は私も旅の記念を買ってきました。開けてみてください」
光秀さんが包みを開封し、キーホルダーの金具をつまんで持ち上げた。
光秀「これはあの時の……」
直立不動で寝ているアザラシがぷらんと可愛らしく揺れた。
「知らなかったんですけど、あのアザラシは、よくあそこで寝ていて有名だそうです。
こんなふうにお土産になっちゃうくらい。
光秀さんが気にしていたみたいなので、可愛すぎるかなと思ったんですけど買ってきました」
光秀「驚いたな…そっくりだ」
「でしょう?」
キーホルダーのアザラシは表情から模様までそっくりだ。
喜んでくれたかなと笑いかけると、何故か光秀さんがキーホルダーを私の顔の隣に並べた。
「……?」
光秀「舞の今の顔に…」
「っ!?こんな呑気な顔してませんっ!!こんな寸胴じゃないし…」
光秀「どれ、確かめさせてもらおうか?」
「え…」
面白がるような眼差しが視界の隅に映った時には、抱きすくめられていた。
「ふえっ!?」
光秀「無防備で居ると白ではいられなくなると言っただろう?」
(光秀さんが、ご、ご乱心だ)
戦国時代に戻ってきた安心感で、どうにかなっているのかもしれない。