第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
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報告と長い長い説教が済んで、やっと自室に辿り着いた。
部屋まで送ってくれた光秀さんに頭を下げる。
「送ってくれてありがとうございました。
このあと御殿に帰るんですよね?ゆっくり休んでくださいね」
光秀「あっちで休ませてもらった。疲れていない」
「そうですか?」
立ち話もなんだからと部屋の中に通した。
留守の間も女中さんが綺麗にしてくれていたみたいだ。
光秀「立て替えてもらった分の金を用意した。受け取れ」
いつの間に用意したのか、和紙に包まれたお金を渡された。
城下で見かけるような銅銭ではないのは明らかだ。
「こんなに頂けません。あのブレスレットはこちらの時代の物に換算すると…」
針子道具の傍に置いてある反物の中から一つ選んで手に取った。使いかけの反物だ。
「この反物ぐらいの値段でした。
だからこんなに頂けません」
倍にして返すと言われたけど、倍どころか何十倍はありそうだ。
光秀「立て替えてもらったのはあれだけではないだろう。
身に着ける物、食事、宿、タクシー、シュノーケリング、それら全部合わせた分だ」
「全部合わせてもこんなにはならないです。せめて半分にしてもらえませんか?」
光秀「半分にするのは面倒。そのまま収めろ」
「め、面倒だから全部だなんて、もう…どんぶり勘定ですね。
では受け取りますので、多く頂いた分で光秀さんに何か仕立てますね。
私に何か縫って欲しいものはありますか?」
光秀「黙って受け取れば良いものを。好きな物を買って着飾れば良いだろう?」
「着飾れと言われても、まだ帯どめとか簪とか、よくわかりませんし…」
着物の良し悪しはわかっても、小物類はまだ勉強不足だ。
光秀「そうだったな。明後日から物を見極める目も養ってやろう」
そういえば光秀さんにこの時代を生きる方法を教えてもらうんだった。
「はい、よろしくお願いします。
明日からではなく明後日からなんですね」
光秀「明日は予定が入っているだろう?」
明日の正午、お茶屋さんで……謙信様と待ち合わせしている。