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☆姫の想い、彼の心☆ <イケメン戦国>

第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)


謙信「そうだな。人も自然も、当事者にしか理解できぬものがあろう…」


遠くを眺め、何かを考えている横顔は儚げで綺麗だった。


(またこの表情だ……)


時々謙信様はこういう雰囲気を漂わせ、何かを憂いている。
謙信様の周りだけ世界は寂しげだ。

気になるけど踏み込んで良いのかわからず、いつも見守るだけで終わってしまう。


(謙信様の憂いをいつか教えてもらえる日が来るかな。
 本当の苦しみは謙信様にしかわからないだろうけど……)


風で舞い上がった髪を耳の後ろで押さえた。

昼間に見た透き通った世界。
永遠に寄せて返す波の音が、素直な気持ちをスルッと言葉にしてくれた。


「ここの美しい景色が、謙信様の憂いを全部消し去ってくれれば良いのに…」


二色の瞳が見開かれた。


(しまった……つい……)


口からこぼれた本音は戻って来ない。


「す、すみません、今の言葉は忘れてください。
 じゃあごゆっくりどうぞ!」

謙信「おい……」


無かったことにしてもらいたくて、逃げるように背を向けた。

ところが身体は反転し、気が付いたら謙信様の腕の中だった。

シュノーケリングの時よりもお互い軽装だから、温もりがダイレクトに伝わってくる。


(抱きしめられてるっ!?)


突然の状況に頭が追いつかない。


謙信「少しこのままでいさせてくれ。
 舞と共に居ると、時々心が乱れて苦しくなる」

「え……」

謙信「だが同時にお前に触れると苦しさが薄らぐ」

「そ、そう言ってくださるのは嬉しいのですが私の心臓がモチマセン」


動揺して会話が片言(かたこと)になり、謙信様がくすっと笑った。


謙信「そういうところにもたまらなく心乱される」


砂糖の袋にブスッと大きな穴が開いたらしい。


「謙信様、こういうことは恋仲の女性としなきゃ……」

謙信「傍に女を置かないと決めている」

「何故ですか?それに女の人を遠ざけるのに、なんで私とは親しくなりたいなんて言ったんですか?」

謙信「それは『まだ』言えない」


綺麗に笑った表情は、酷く寂しげだった。


「ごめんなさい。無理に答えなくて良いです」


(余計なこと言っちゃったな)


誰だって踏み込まれたくない悩みや傷はあるだろうに。

胸の中でもう一度謙信様に謝った。


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