第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
(縛るとか…?)
そんな趣味があったなんて知らなかった。
できれば遠慮したいけど光秀さんがあまりにも凄みのある表情だったので反射的に返事をしてしまった。
「はい…」
光秀「その返事、お前自身も覚えておけ。後で『そういうつもりじゃなかった』と言っても受け付けないからな」
「えぇ?」
(今の言い方、嫌な予感がする)
『囲う』の意味を後で調べてみよう。
いや、現代と500年前で意味合いが違うことが多いから秀吉さんに聞いてみた方が良いかもしれない。
「やっぱりさっきの返事は保留に……」
光秀「返事はさっきの『はい』で決まりだ」
保留の件はサラーっと流されてしまった。
光秀「まぁ、お前が黙って囲われる女ではないのはわかり切っていることだがな…」
頭に大きな手のひらが乗り、ぽんぽんと撫でられた。
その手がするりと頬に降りてきた。
(ん……気持ち良い……)
目をつむって温もりを堪能する。なんだか無性に人肌が恋しい。
情緒ある音楽と波の音がそう思わせるのか。
それとも明日で現代とお別れだという寂しさのあらわれなのか。
もっと触れたくて頬を寄せた。
お風呂に入っても、まだ酔いが醒めていないみたいだ。
甘える私に、光秀さんは手の甲をそのままにしてくれる。
光秀「この地で、ずっと二人で居られたら…幸せだろうな」
「ふふっ、光秀さんがそんなこと言うなんて…。
居心地が良くて帰りたくなくなっちゃったんですか?」
目を細めた光秀さんが優しく微笑んだ。
光秀「そう…かもしれないな」
短い返事の端っこに、激しく焦がれている何かが滲んでいた…。