第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
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昨夜と同じ順番でお風呂に入り、私が最後に済ませてリビングに行くと誰も居なかった。
照明がしぼられていて、薄暗い。
(二人とも、もう寝ちゃったのかな…)
ベッドルームのドアが開いていたので覗いてみたらバルコニーで光秀さんがお酒を飲んでいた。
部屋の照明はつけていないから、シルエットだけ見えている。
光秀「舞か…?」
「はい、お邪魔してすみません。お風呂からあがったら誰もいなかったので…」
表情がわかるところまで歩み寄った。
光秀さんは長い足を持て余すようにして、椅子に座っている。
光秀「悪かったな。座るか?」
「お言葉に甘えて少しだけ…」
光秀「下から音が聞こえてくる。波の音と混ざり、なかなかに良いものだ」
耳を澄ませると三線(さんしん)の音が聞こえてくる。
下にレストランがあるから、BGMで流れているんだろう。
光秀さんが言う通り、波の音と爽やかな風にのって響く音が、胸に染みこむようだった。
光秀「この目で500年後を見られるとは思っていなかった。礼を言う」
「お礼なんていいですよ。こちらこそ私が生まれた世界を共有できてすごく嬉しかったです。
夏に冷たい物が飲食できるとか、四六時中好きな時にお風呂に入れるとか、電気で部屋の温度を調整できるなんて、いくら口で説明しても分かってもらえないでしょうから」
光秀「まさしく百聞は一見に如かずだな。服装や建物、舟の造りまで全く違っていた。
500年でこんなにも変わるとは思ってもみなかった」
「そうですよね。現代の技術を理解しないまま使っているので、教えてくれと言われても教えられないのが残念ですけど」
光秀「ここまで技術が進歩していれば、それぞれ細部まで知り、理解するのは難しいだろうな」
「はい。スマホだって使い方はわかりますけど、中身がどうなっているか、どういう仕組みで情報を探し出しているのか、わからないのが正直なところです。
戦国時代に飛ばされて一番がっかりしたのはスマホが使えないことでした」
メールも電話もできない、知りたい事をすぐ調べられない。
写真を撮りたいと思っても電池が切れてしまえば使えない。
光秀「本当に帰るんだな?」
念を押すように確認された。