第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
視線を彷徨わせて気が付いた。
(もしかして光秀さんも『あーん』して欲しかったのかな?)
後から考えてみれば恥ずかしい発想でしかないけど、酔いが回った頭ではそのくらいしか思いつかなかった。
箸をとり、手近にあった料理をひとつ箸で摘まんだ。
「光秀さん、はい、あーん」
突然の行動に隣の謙信様が驚いている。
「だって謙信様にだけして、光秀さんにしないのはフェアじゃないでしょう?」
光秀「そういう意味で見ていたわけじゃない」
光秀さんは苦笑して口を開いてくれた。
箸を持っている右手首を固定するように緩く握られた。
琥珀の目が一時も離れないまま、咀嚼し、飲み込んだ。
光秀「甘いな…」
「……苦瓜ですよ、光秀さん」
それに味がわからないなら『甘い』という感想もおかしい気がする。
そういえば船の上でもドレッシングを美味しそうに舐めていたし、現代に着た途端、味がわかる男になったのだろうか。
光秀「お前が手ずから与えてくれるものは全部甘くなる」
どんな意味合いが含まれているのか、わかるようなわかりたくないような……。
光秀「ふっ、舞の困った顔をつまみに酒を飲むことにしよう」
「むっ!そんなのつまみにしないでくださいっ!」
(つまみにしたところで美味しくもなんともないのに)
ぷりぷりしながらデザートを注文した。
謙信「パフェとは甘味のことか?」
「はい、冷たい甘味です」
果物でデコレーションされたパフェの写真を見せると、謙信様が若干驚いた顔をしている。
謙信「これを一人で食べられるのか?」
「はい!」
謙信「……」
光秀「だから言ったろう?そのうち甘味に手を出すと」
光秀さんが喉を鳴らして笑った。