第1章 日ノ本一の…(上杉謙信)(R-18)
小姓「しかし謙信様が尚文を手放すだろうか」
「私はそんなに重宝されていませんよ。小姓の仕事もできませんし」
小姓「だが、直々に刀の指導をされ、梅の世話係まで任じられただろう。
謙信様が目をかけてくださっているのは尚文もわかっているだろう?」
「小姓の皆様より手が空いているから世話係を頼みやすかったのかもしれませんし、刀の鍛錬は私があまりにも弱々しいからなのでは…」
小姓「この間謙信様の刀を受け止めているお前を見たが、決して弱々しくなどなかったぞ?
むしろ私などはあのような一撃、即死しているかもしれん」
思い出してゾッとしたのか先輩は身震いしている。
「ふふっ、四六時中襲われれば先輩も受け止められるようになりますよ」
小姓「い、いや、その精神力が既に普通ではないと思うぞ?」
「そうですか?さて、謙信様のお布団を日に当ててきますね」
小姓「謙信様が戻るまであと数日かかるだろう。使っていない布団に毎日日を当てる必要はないぞ?」
「そうですが、謙信様なら突然帰ってきてもおかしくはないので念のため。
お部屋に風も通してきますね」
小姓「本当に尚文は細かいところまで気を使うな」
「あと少ししかおりませんけれど、よろしくお願いしますね」
小姓「わかっているよ、行ってこい」
ここでずっとお仕えしていたいという気持ちに蓋をして、謙信様の部屋へと向かった。