第1章 日ノ本一の…(上杉謙信)(R-18)
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謙信様が国境の小競り合いをおさめに出かけて数日後。
城に留まるように言われて仕事をしていると、私宛に文が届いた。
(兄上からだっ!)
差出人を見て、急いで文を開いた。
ねん挫は完治し、あばら骨もようやくくっついて、今は鈍った身体を鍛えているところだという。
「あと10日程したら城にあがれるだろう……か」
(怪我が治って良かった……。文をしたためた日付を見れば、あと8日くらいね)
あと8日、ここで過ごせば兄上の場所を守れたことになる。
早く肩の重荷をおろしたい。
(ゆっくりお風呂に入りたいな)
四六時中緊張感を持ち、謙信様の襲撃に備えなくてはいけない生活も、もうすぐ終わりだ。
まぁ、今は謙信様が不在なのでユックリできているけれど。
小姓「尚文の兄上はなんと言って寄こしてきた?」
文を届けてくれた先輩が私の手元を覗き込んだ。
「あと10日…実質あと8日程で城にあがれそうとのことです。
もうすぐ先輩方ともお別れですね。少し寂しく思います」
小姓「そうか。だがまだ8日ある。最後までしっかり勤めろよ」
「はい、もちろんです」
寂しさで元気をなくしていたところを先輩が励ましてくれた。
姫でなければ、ずっとここで仕事をしたいくらい環境が良い。兄上が羨ましい限りだ。
そう思っていると先輩が『うーん』と考えている。