第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
超レアと言えば激甘い謙信様もそうなんだけど、いったいどんな心境の変化があったんだろう。
端正な横顔をじっと見つめる。
謙信「なんだ?」
横を向いていた顔がこちらを向いたのでドキリとする。
お酒の香りを漂わせた謙信様は妖艶さを増している気がする。
「つれなかった謙信様が、現代に来てから思いっきり優しく甘やかしてくれたので、どうしてなのかなと思って…。
あっちに帰って、また以前のように素っ気なくされたらメンタルがズタボロになるかもしれません」
謙信「めんたるがズタボロ…?」
「傷ついちゃうなぁってことです」
グラスを傾ける手がピタリと止まって、二色の目に艶やかさが増した。
謙信「俺にあしらわれると傷つくというならば、舞は俺のことが好きなのか?」
「好きに決まってるじゃないですか。嫌いだったら城下でお見かけする度に声をかけたりしません」
度数25度、30度の焼酎ばっかり飲んでいたせいで、頭がフワフワする。
謙信「お前の『好き』は……」
コトリとグラスを置く音がして顎をすくわれた。
「!?」
謙信「顔見知り、知り合い……それとも想い人に対してか」
「え…?」
謙信「舞にとって俺は、どれだ?」
鋭い眼差しが迷うように揺れている。
宝石のような二色の瞳に私だけが映っていた。
(これ…まるでキスされる直前みたい)
摂取したアルコールに何かが引火して、ぼっと身体が熱くなった。
度数98パーのスピリタス飲んだのと変わらない衝撃を、謙信様の視線から受けた。
「え…と」
光秀「舞」
声をかけられた方に、何の迷いもなく顔を向けると、口の中にでっかい豚の角煮をつっこまれた。
口の前に食べ物を差し出されると口をあけてしまう悲しい習性…。
もちろん知っている人限定だけど、それを熟知している光秀さんにやられてしまった。
「んむ?!(なに?!)」
柔らかく煮込んである豚肉が口を占領する。
身体の熱はどこへやら、両手で口元を隠して咀嚼すること30秒……。
その間に謙信様と光秀さんは睨み合っていた。