第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
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下船後は一旦ホテルに戻って休憩し、日が傾くのを待って繁華街に出た。
日中は暑いとはいえ、やはり季節は秋。
夕暮れになると風は涼しくなり、リーンリーンと鈴虫が鳴きはじめた。
明日の早朝にはワームホールが開く予定なので、お土産を買うなら今しかない。
お土産を選び始めた私に、光秀さんは『帰るのか』と聞いてきた。
「帰ります」
光秀「乱れ狂う戦国の世を選ぶとは酔狂な女だ。
しかし舞の意志は尊重する。明日、共に帰ろう」
酔狂な女だと言うわりに、嬉しさを噛み締めるように『帰ろう』と言ってくれて、それが凄く嬉しかった。
「はい!」
迷わず返事をして、お店が立ち並ぶ通りを歩きだした。
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民芸品の獣の置物を買おうか迷っているうちに、いつの間にか二人の姿がなくなっていた。
ボディーガードのように張り付いていた二人がいなくなると、妙に寂しい気持ちになる。
「私、迷子?」
(そんなわけないか。このお店を物色し始めた時は、二人共後ろに居たんだから)
そういえばお土産品に夢中になっていた時、どこかに行くと声をかけられた気がする。
(どこに行くって言ってたっけ?)
夕涼みを兼ねた観光客が多く、目立つ二人と言っても、見つけられなかった。
「この場所を離れるのはまずいよね。迎えに来てくれるまで待っていようっと」
細かい雑貨を売っているお店だったので、じっくり見て買い物をしていると、謙信様が現れた。
謙信「大事なかったか?一人にしてすまなかった」
「大丈夫ですよ。おかげでゆっくり見られましたし」
謙信「それは良かった。ところで来て欲しい店がある。一緒に来てくれるか?」
自然に手を握られてドキリとした。
「光秀さんも居ないんです。ここを離れるわけには…」
謙信「今から行く店に明智も居る」
「そうなんですか?お二人で行動なんて珍しいですね」
謙信「仕方あるまい」
「ふふ、じゃあ、行きましょうか」
謙信様が人を避けながら歩いてくれる。
現代人とは違うオーラが、広い背中から感じ取れた。
凍えるような冷たい眼差しと、静かに人を圧するオーラに、人混みが自然に割れていく。
(頼もしいな………)
繋いだ手にキュッと力を込めると、謙信様は何も言わずに握り返してくれた。