第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
指1本では拭いとれず、2本、3本目でやっと流れ落ちるのが止まった。
「こんなにいっぱいこぼしちゃって……もったいない…」
光秀・謙信「「………」」
光秀さんには私のドレッシングを使ってもらおう。
拭くものがないので指を口に近づけた。
このままではお箸が持てないし、お腹もすいた。
向かい側の席に座っていた謙信様が腰を浮かせた。
謙信「ま……っ」
「え?」
謙信様が止めにはいったのはわかったけど、舌は指に到達していた。
ペロ
「ん、いっぱい動いたから、美味しい……」
酸味が効いた味わいが舌に広がり、ほぼ空っぽのお腹がグウと鳴った。
ガタガタッ!!!!!!!
謙信様がテーブルに身を乗り出してきた。
ためらいもなくラッシュガードを脱いで、それを私の胸に押し付けた。
(っ!?こんなに慌ててどうしたの!?)
謙信「早く拭け!」
謙信様は頬が紅潮させて、指先に残っていたドレッシングと胸元をゴシゴシ拭きとってくれた。
たいして残っていなかったドレッシングはすぐに綺麗になくなり、ご丁寧に私のラッシュガードのファスナーを一番上まで締めてくれた。
「ありがとうございます。謙信様のラッシュガードを汚してしまってすみません」
謙信「今のは駄目だ、舞。もう二度と人前でするなよ?」
ラッシュガードを汚したというよりも、指なめ行為を本気で怒っているみたいだ。
その様子に行儀が悪かったなと反省した。
「ごめんなさい。拭く物がなかったとはいえ、行儀が悪かったですね」
謙信「行儀という問題では……」
謙信様は皺が寄ったラッシュガードを羽織って、ハァとため息を吐いた。
やっぱりまだ頬は赤くて、なんでそんなに動揺しているのかわからなかった。
「行儀が悪くて怒っているんじゃないんですか?」
謙信「いや……」
なんだか謙信様の返事がさっきから歯切れが悪い。
「光秀さん、すみませんでした。代わりに私のドレッシングを使ってくださ……い?」
手つかずのドレッシングを差し出すと、光秀さんが声も出さずに笑っていた。