第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
「どーでも良いですけど、断る時に私をダシに使うのはやめてくださいよ?
お姉さん達に『え?こんな女が?』みたいな顔で見られちゃったじゃないですか」
謙信「…何?どの女がそのような目で見ていたのだ?
跪かせて謝らせてやるから教えろ」
「っ!?えー…忘れてしまいましたので、いいです。ご飯にしましょう」
限られた空間の船の上で揉め事は起こしたくない。
数あるおかずから海ぶどうを選んで口に入れた。
プチプチとした食感を楽しんでいると、隣に座っている光秀さんが箸を置くのが見えた。
光秀「舞、これはどうするんだ?」
光秀さんが持っていたのはフレンチドレッシングの小袋だ。
「このサラダ…生野菜はこのままだと味がしないので、ドレッシングをかけて食べるんです。ここに切り口があって……んん…?」
海水でふやけた指先に力が入らず、開封に苦戦する。
小袋が裂けたのと同時に、ドレッシングが勢いよく跳ねてしまった。
「あっ、失敗!ごめんなさい」
『ピチャッ』と小さな水音がして、はねたドレッシングが私の胸元と太ももにかかった。
トロミのある白い液体が、薄いスジをつけながら胸の谷間へと流れていく。
謙信「……っ」
光秀「……」
「わわ、拭くもの……がない!」
荷物一式は船内に置いたままで、もちろん水着だからハンカチやティッシュなんて持っていない。
これ以上ドレッシングが広がったら、ホテルに着くまでドレッシング臭さに耐えなくてはいけない。
帰りはまたタクシーの後部座席にぎゅうぎゅうで乗るだろうし、臭くなるのは避けたい。
(マナー違反だと思うけど…)
流れる白い液体を指ですくった。