第1章 日ノ本一の…(上杉謙信)(R-18)
(気持ちいいって思ってくれているんだ…。嬉しいなぁ…可愛い…)
こらえても口元がゆるっとなった。
うさぎを愛でていると、その手首をがしりと捕まえられた。
「!?」
私の手首を一周してもまだ余る大きな手に引っ張られる。
引かれるままに導かれた先には、
ふわ
謙信様の外套の白い毛だった。
心臓がとまるくらい驚いたけど、フワフワの手触りにため息がでた。
(や、柔らかい)
謙信「うさぎとどちらが良い手触りだ?」
細められた目に意地悪が浮かんでいる。
(これは絶対遊ばれている!)
まさか謙信様がこんな戯れをされるなんて。上品な香の香りに喉がカラカラになった。
「謙信様もお人が悪い…」
謙信「そんなことは聞いていない、どっちだ?嘘は言うなよ?」
(ええっと……た、助けて~~~~)
幸村様と佐助殿に助けを求めると二人共面白そうにこちらを見ている。
助けてくれる気がないのが一目でわかる。
「ど、どっちも同じくらいふわふわで…気持ち良いですが、うさぎの方が温もりがあって私は好きです」
謙信「ふっ、己の意見を率直に言うのも小姓としては重要だぞ?」
冷ややかな雰囲気は失せ、見守るような眼差しには温かさが滲んでいた。
それを見て…心臓が静かに跳ねた。
「はい、わかりました」
謙信「梅がまだ完治していないというのに庭に出たがって困っている。
明日から一日に数度、梅を庭に放して様子を見てやってくれ。話は通しておく」
(梅のお世話係に任命されちゃった!)
謙信「庭には他にもたくさんうさぎが居る。ついでに可愛がってやってくれ。それと梅の他に、松と竹といううさぎが居る。兼続に教えてもらえ」
「わかりました!!」
(謙信様って……冷たくて怖い方なのかと思っていたけど…優しいのね)
次の日、梅が他のうさぎに混じってしまい途方に暮れることになろうとは、この時の私は予想だにしていなかった。