第1章 日ノ本一の…(上杉謙信)(R-18)
昼食を終えて、敷物を片付けていると…
(あ、うさぎ!あっちにも!!)
さっきまで鍛錬に夢中で気が付かなったけど、ちらほらとうさぎの影が見えた。
謙信様と幸村様はただ単に散策に来ただけみたいで、城に戻るみたいだ。
話している三人の後ろで控えていると茶色のうさぎが近寄ってきた。
手が届きそうなところに居るうさぎに触れたくてたまらない。
(ああ、可愛い……攫ってしまいたいわ。お屋敷に戻ったらうさぎを飼って良いか、父上にお願いしようかしら)
思わず手を伸ばし耳に触れると、うさぎは嫌がって逃げてしまった。
(あ…残念…)
謙信「尚文」
しゃがみこむ気配と一緒に、謙信様の声が耳元近くで響いた。
「っ、はっ、はい!!」
びっくりしておかしな返事をしてしまった。
謙信様は逃げたうさぎをやすやすと捕まえて引き寄せた。
謙信「うさぎは耳が敏感で触れると嫌がる。撫でたいのなら背中や、額にしておけ」
(え?)
意外にもうさぎの可愛がり方を教えてくださった。
謙信様の長い指先がうさぎの額に伸びるとうさぎは気持ちよさそうにしている。
言われた通りに背を撫でてあげるとうさぎはじっとしている。
(わぁ…可愛い…んん?)
うさぎから『ギシ』とでも表現すれば良いのか、変な音がする。
「謙信様…これはなんの音でしょうか?」
謙信「歯ぎしりだ。心地良いとこうなる」
「うさぎが歯ぎしりをするのですか?知りませんでした」
歯ぎしりなんて人だけがする行為だと思っていた。