第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
狙いを定めたと言わんばかりに綺麗な顔が近づいてきた。
謙信様の吐息を唇に感じるまで迫られて…
光秀「……ドライヤーとやらを取りに来たが、何をしている?」
謙信「貴様は何度邪魔立てすれば気が済むのだ?」
謙信様の唇が離れていき、身体から力が抜けた。
(何だったの今の!?何されそうだった?)
魂が抜け出そうな状態ではあったけど、二人はバチバチモードに突入している。
飛び立ちそうだった魂を急いで手繰り寄せた。
光秀「何度も?さてなんのことだか、わからんな」
謙信「とぼけるつもりか?舞、俺の姫鶴を出してこい」
「わーーー!!喧嘩しないでください!!
二人共歯磨きの時間ですよ!磨いたら今夜はもう寝ましょう!!」
すぐ喧嘩ばっかりするし、睨み合っている二人はでっかい子供だと思うことにした。
適当になだめ、歯ブラシと歯磨き粉を使った歯磨き講座を開催したのち、ベッドに追いやった。
謙信「口が涼しくて眠れない…」
「すぐ元に戻ります」
光秀「ベッドが揺れて心許ない」
「今にその揺れが心地よくなります」
灯りを落とした寝室で寝ていると、今の状況がいかに特殊なのか実感した。
敵同士の二人が並んで寝ていて、少し離れた場所で私が寝ている。
学生の頃でさえ男友達と同室なんて経験はなかった。
「なんか……こうして三人で寝てるなんて変ですねぇ、ふふ」
謙信「楽しそうだな」
「楽しいですよ、二人の…」
『二人の意外なところをたくさん見られたので』。
そう言おうとして睡魔に襲われ、言葉が途切れた。
光秀「二人の、なんだ?」
「………」
謙信「言いかけて寝る奴があるか。まったく……おかしなやつだ」
光秀「男二人が居る部屋で寝つきが良すぎだ、馬鹿娘」
(眠たいんだもん、ごめんなさい…)
二人分の呆れ声に謝りながら、眠りについた。