第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
髪が濡れている。
「あ…、謙信様、ドライヤーっていう便利なものがあるんですよ」
ドライヤーをあててあげようとしたら、大きな音に二人が殺気だったのには笑えてしまった。
光秀さんをお風呂に行かせて、まだ警戒している謙信様に座るように促した。
「暖かい風が出ているだけですよ。髪を乾かしますので前を向いてください」
謙信「む……」
不承不承といった感じで謙信様が私に背を向けた。
まるで毛を逆立てた猫みたいで可愛いらしい。
濡れていた髪が乾いてくると、指通りがサラサラになった。
(綺麗な髪だな…)
ドライヤーの風を弱くして、ブラシをかけてあげる。
(あ、そうだ…)
悪戯心に火がついて、意図的にブラシを動かすと……
(七三分けの謙信様……ふふ)
気付かれる前にササッと元に戻したつもりだったけど、ジト目で睨まれた。
謙信「今しがた、俺の髪で遊んでいなかったか?」
「なんのことですか?色々な方角から風をあてると乾きやすいですし、分け目とは逆のほうから風をあてることで髪がふわっとなるんですよ~~」
謙信「何故そのように目が泳いでいる?」
「き、気のせいですよ」
謙信「気のせいではないが」
ずいと近寄られて顔に影ができるくらい間近に迫られた。
(わわわわわっっ!?)
謙信「揶揄いがいがあるな、舞は」
謙信様が笑って身体を離してくれた。
「嬉しくないです!あれ…?」
謙信様の頭頂部の髪がぴょんと立っている。
「そういえばこの辺の髪っていつも立ってますよね」
まだ持っていたブラシで撫でつけても、すぐにぴょんと立ち上がる。
「ふふ……」
何度やっても寝てくれないので楽しくなってきた。
「ここだけ生えぐせがあるんですね。知らなかったなぁ…」
謙信「舞…俺の髪をタダで弄ぶとは良い度胸だ」
「え?あ……」
(頭頂部ばかり見ていたから忘れていたけど、謙信様の顔が目の前だった!)