第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
「光秀さんは大人だなぁって尊敬の眼差しで見ていただけですっ!
たった今、尊敬はどん底まで失墜しましたけど」
光秀「ふっ、それは残念だ」
(全然残念そうな顔をしていないんですけど!)
自分ばかりドキドキさせられて不公平だ。
「大体!城下に出れば、光秀さんを熱視線で見ている女性がたくさん居るじゃないですか。
私なんかの視線なんて、ホントは気にならないでしょう?」
光秀さんは涼しげに笑って聞き流すと、テレビのリモコンを手にした。
光秀「それで?これは何に使うんだ?」
人が言っていることをさらっと流す腕前は流石だ。
流されまくって怒り狂っている秀吉さんの気持ちがちょっぴりわかった。
「これはテレビを操作するものです。電源を入れて、この数字のボタンを押して……」
少し面白くない気分で、テレビの説明にはいった。
光秀さんは画面とリモコンを交互に見ている。
光秀「なるほど。このボタンはなんだ」
「どれですか?」
光秀「数字の並んでいる下の…」
ギシ…
光秀さんが身体を寄せてきた拍子に、柔らかいソファが沈んで……私の身体が傾いた。
左肩、左腕に光秀さんの感触がして、頭も軽くコツンとぶつけてしまった。
(ひょえっ!)
「す、すみませんっ!!」
飛びずさって謝ると、光秀さんが肩を震わせて笑っていた。
光秀「くくっ、無防備な上に初心(うぶ)とは……」
「ち、ちがっ!光秀さんは知っている人なので警戒心なんて持つわけないでしょう!
それに、それなりに男性経験もありますし、全然初心じゃありません!」
(光秀さんに不意打ちでくっついちゃったら、誰でも飛び上がると思うけど…)
光秀「これくらい触れ合っただけで過剰に反応するくらいだ。
お前の『それなりの男性経験』はさぞかし清い仲だったのだろうな」
「違いますっ!」
(光秀さんが格好良いからって言えたら良いのに!キーーー!)
悔しいからぜぇっったい言ってやらない。