第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
針子部屋に居る皆から聞く和装の知識も、現代に伝わっていないものがたくさんあった。
学びたりないし、まだ見ていない、触れていない織物がたくさんあるだろう。
そう思えば3日後、戦国時代に帰ることに迷いはなかった。
迷いがあるとすれば、戦国時代は命のやり取りが日常茶飯事で、いつ、何がきっかけで命を落とすかわからない危険があるということだ。
光秀「まだ答えを出さなくても良い。あと二日。よく考えろ」
「はい…」
(光秀さんは私がここに残ると言ったら、なんのためらいもなく戦国時代に帰ってしまうのかな)
寂しくなって俯くと頭に大きな手が乗せられた。
光秀「生きやすいだろうと言ったが、幸せだろうとは言っていないからな」
「幸せ………私の……」
危険を避けるために探求心を手放したら、後悔する気がする。
戦国時代に行きたいと、そればかり考えるようになるかもしれない。
あの時代の織物に対する想いは、もう手放すことができないくらい大きい。
そこまで考えてやめにした。
光秀さんが言う通り、あと二日ある。
(一時の感情で判断しないで考えてみよう)
頭にのっていた手を、両手で掴んで下ろした。
「もともと帰るつもりでしたが、考えてみます」
光秀「そうしろ」
私がよく考えもせずに戦国時代に帰ろうとしているのを、光秀さんは察していたのかもしれない。
(大人だなぁ……)
尊敬の眼差しで見つめていると、光秀さんの口元が意味ありげに吊り上がった。
(う、嫌な予感っ!)
逃げる間もなく両頬を掴まれた。
包まれた頬に感じる指の感覚に、意識をもっていかれそうになる。
光秀「なんだ?そんなに見つめられると、誘っているのかと勘違いしそうだ」
「う…」
(わぁーーーーー!!!)
迫りくる整った顔に、思わず両手を突っ張ってガードした。
光秀さんの鼻や頬が両手にあたってドキッとした。
(ガードしなかったら、どうなってたっ!?)
胸の内がギャーギャーと騒がしい。