第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
「良かったです。楽しんでもらいたいとは思いますが、疲れ切ってしまっては楽しさも半減してしまいますから…。
こちらに居る間はゆっくりした気持ちで過ごしてくださいね?
向こうにあるバルコニーで過ごしても、刺客が来るとか、銃撃されることはありません」
殺人や銃撃が全く無いわけじゃないけど、隣のホテルとはキロ単位で離れているし、セキュリティもしっかりしたホテルだ。
油断なく暮らしている毎日から、今だけ解き放たれて欲しいと思う。
光秀「わかった。風呂から上がったら涼んでみることにしよう」
「波音を聞きながらお酒を飲むのも良いかもしれませんね」
光秀「さっき冷蔵庫の説明をしてもらったが、この世は暑い時でも冷たい物が容易く手に入るんだな」
「はい。電気のおかげで夏でも冷たい物が飲食できますし、こうして部屋の温度を下げることもできます」
光秀「このような時代で育った舞に、戦国の世は不便だろう?」
「不便だとは思いますが、あっちの時代の良さもありますから。
慣れてしまったので平気です」
光秀「暑気あたりを起こしていたお前が言うと説得力にかけるぞ?」
光秀さんがクスっと笑った。
「それは……まぁ、言い訳もできませんけど…」
ばつが悪くなって、言葉が尻切れになった。
光秀「このまま帰りたくないと思わないのか」
「え…?」
顔をあげると、芯の強い眼差しが私を捕えていた。
光秀「戦国の世に帰りたくなければ無理に帰る必要はないぞ?
舞はこの時代の人間だ。もし残るなら俺から信長様に伝えてやる」
「私は戦国時代に帰るつもりです」
光秀「何故だ?生まれ育った時代だろう。
ここで生きた方が、お前にとって生きやすいんじゃないか?」
光秀さんの言葉が、帰ろうと決めていた気持ちを惑わせた。
「生きやすいとは思います。ただ………」
正直、戦国時代の文化に惚れこんでしまった。
主に織物だけど、現代では見られない技巧に魅せられてしまった。
あの時代の人にとってはありきたりの反物でも、私にとっては凄く貴重で、それらを使って着物を仕上げることに幸せを感じていた。