第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
アクアリウムの他にも、チンアナゴなど、どちらかというと小さめの生き物が好きみたいだった。
(意外だなぁ。帰ったら佐助くんにも教えようっと)
飼育員さんの説明が終わって、いざという時になって触るのが怖くなった。
私達の前には小さめのイルカが大人しく待っている。
「私の手、熱いんですよ。イルカは人間の手を熱いって思わないでしょうか…」
謙信「他の者が触れても平気な顔をしている。大丈夫だろう」
よその組を見ると、確かに嫌がる素振りは見せていないようだ。
謙信「張り切って手を挙げたわりに怖気づくとはおかしな奴だ。
ほら、怖くないからおいで」
謙信様が先に触ってみせてくれた。
「ど、どんな感じですか?」
謙信「つるっとしている」
「……」
真面目な顔で答えた謙信様に『そんなの見ればわかるよっ!』とは言えない。
イルカの艶々と光っている身体を見遣る。
謙信「時間が無くなるぞ?貴重な体験ができないまま終わらせるつもりか?」
「う……では……」
おそるおそる手を伸ばして触ってみた。
ペタ
「わ、わぁ…ほん、と、つるつる!しかも結構しっかりしていて硬いですね」
おっかなびっくりで触れたわりに、一度触ってしまえば全然怖くなかった。
ぺたぺたと触っていく。
謙信「目が小さいな。よくあれだけの芸をしているものだ……」
謙信様はイルカの頭を撫でている。
愛でるような眼差しは、普段見たことがなかった。
(佐助くーん!!謙信様が甘いよ!この顔、見て欲しいっ!)
佐助君や幸村が見たらひっくり返りそうな優しい顔をしている。
(貴重だなぁ。イルカもだけど、謙信様のこんなお顔を見られるなんて!!)
謙信「可愛いな」
「はい。可愛いですね、イルカが!」
(イルカがってことだよね?)
光秀さんといい、二人ともちゃんと主語を付けて欲しい。
謙信様がふっと笑う気配がした。
もしかしたらイルカに向けていた優しい顔を今もしているのかと思うと、顔をあげられなくなってしまった。