第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
飼育員「ではショーの目玉!イルカとの触れ合いコーナーです!
触りたい方は手をあげてくださーい!」
(触りたいっ!)
ビシッと真っ直ぐ手をあげた私を、光秀さんと謙信様がおかしそうに見ている。
子供っぽいと思われていそうだ。
「笑っている場合じゃないですよ!貴重な体験ができるかもしれないんですから!
こういうのはカップルの方が当たりやすいんですっ」
謙信「カップルとはなんだ?」
「いいからつべこべ言わずに手を挙げる!」
謙信「!?」
謙信様の手を取って、無理矢理手を挙げさせた。
飼育員「ではそこのイケメンさんと彼女さん、どうぞ~~」
「う、うそ…。当たっちゃった」
光秀「ふっ、あれほど勢いよく手をあげていればな。行ってこい」
「すみません、光秀さん、いってきますね」
謙信様が立ちあがり、手を引いてくれた。
謙信「床が濡れて滑りやすい。気を付けろ」
「ありがとうございます」
私達の他にも数組がステージに立った。
突然のイケメン登場に、観客の…主に女性達が目を輝かせている。
飼育員「では触れ合う前に、イルカにゼスチャーで指示を出してもらいます。
水面に向かって両手で円を描くようにして………」
言う通りにゼスチャーすると、半身水に浸かっているイルカがクルクルとその場で回ってくれた。
「わっ、できた!できましたよ。謙信様っ!」
隣に居るのだから見てくれているとわかっていても、嬉しくてアピールしてしまった。
謙信様が満面の笑みを浮かべている。
謙信「よくできたな」
「謙信様もやってみてください」
謙信「こう……か?」
同じ動作をしているのに、謙信様だと優雅に見えた。
「そうそう!!可愛い!!」
謙信「……お前もな……」
「何か言いました?」
謙信「いや、なんでもない」
いよいよ触れ合いタイムになり、イルカがプールから上がってきた。
謙信「…陸に上がっていて大丈夫か?」
謙信様が心配そうにイルカを見ている。
いつもナイフみたいに切れそうな眼差しが、今は気遣うような色を浮かべている。
(謙信様って佐助君達には物騒なことばっかり言っているけど、動物には優しいみたい?)