第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
「誰にもバレていないと思っていました…」
光秀「そう思っているのはお前だけだ。
城中の者は皆知っているぞ?」
「そうなんですかっ!?」
私の部屋から見える庭の眺めはとても良い。
廊下に出て、お花や木を見て…のんびりお昼寝をするのが癒しのひと時だった。
「恥ずかしい…もうしません!」
光秀「今更だろう。好きなように過ごせば良い。
安土城は舞の家同然だろう?」
「それはそうですけど…」
舟を漕いでいたり、ヨダレを垂らしていたら恥ずかしすぎる。
光秀「それとも…」
言いかけて光秀さんは言葉を切った。
リラックスしていた表情は、見る間にいつもの光秀さんに戻って表情を隠した。
何か言おうとして、胸の内に押し込めてしまったようだ。
きっと『なんですか?』と聞いても答えてくれないだろう。
もう一度アザラシを見ると、まだ同じ体勢で寝ている。
「私に似ているかどうかは別として可愛いですね。
アザラシのボディラインがいいなぁ」
光秀「ボディ…ライン?」
「身体の線ってことです」
両手を使ってアザラシの身体のラインをなぞる。
くびれのない胴体は、後ろ足にむかって細くなっていく。
「モッチリしているのかなぁ。どんな触り心地なんだろう。
こう……抱きしめたくなっちゃいますよね」
私もアザラシの顔を水槽越しにツンとつついた。
光秀さんは私をじっと見つめ、
光秀「ああ、そうだな」
と笑って答えた。
直立不動で寝ているアザラシをしばらく眺めた後、三人でイルカショーを見るために屋外プールに向かうことにした。
アザラシの前を通り過ぎた時、謙信様が『舞に似ている…』と足を止めたのでイルカショーの時間に滑り込む羽目になった。
二人が持っている私のイメージは共通しているらしい。
謙信「眠そうにしていた時の舞のようだ」
「眠そうにしていた時なんてありましたか?」
謙信「……『早く帰れ』と言ったあの時だ」
「あっ……」
あの日は前日夜更かしをしてしまって、寝不足だった。
(うるさいから帰れって言ったんじゃなく、眠いなら早く帰って休めってことだったんだ)
勝手に悪い方に解釈していた。
「ごめんなさい、謙信様。ありがとうございます」
お礼を言うと、謙信様は薄く微笑んだ。