第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
光秀「なるほど……、車側の信号も青になっているから気をつけなければいけないのか」
「そうです!今のうちに渡りましょう」
車がこないうちにと裾を軽く引いた。
歩き出した謙信様が左手を出してきた。
(なんだろう、この手…)
謙信「まだ信号とやらに不慣れだ。危なくないよう、手を繋いでくれないか?」
「……」
(頼ってくれているより、甘えてくださってる…?)
ツンツンした謙信様しか知らなかったから、甘えられて胸がキュっとなった。
(デ、デレた!謙信様がデレたよ、佐助君!!)
動揺しすぎて、ここに居ない佐助君に報告してしまった。
謙信「駄目か?」
駄目どころか大歓迎だ。
「駄目じゃないです!では失礼しますね……」
ドキドキしながら大きな手のひらに手を乗せた。
初めて触れた謙信様の手のひらは大きくて、力強かった。
(お、男の人の手、久しぶりに握った……)
彼氏いない歴ウン年。
頭の上で二人の視線が静かにぶつかりあっていることなど知らず、男性の手の感触に感動していた。
光秀「女嫌いの噂は間違いか?あざとい男だ」
謙信「なんのことだ?」
え、と思った時には、光秀さんに左手を握られていた。
「!?!?!?!?!?」
見上げると、光秀さんは片手に紙袋と刀類をまとめて持ち、怪しく笑っている。
私の驚愕の表情を楽しそうに見ながら。
光秀「常に三人でいよう、だろう?」
「だ、だからって…手っ!手っ!?」
そう言い返すと、余計に強く握ってきた。
光秀「謙信とは手を握って、俺とは握ってくれないのか?」
「いえ、そういうわけじゃないですけど…」
光秀「なら良いだろう?」
ちょっと汗ばんでいる左手に指を絡められた。
(ゆ、ゆゆゆ、ゆ、びぃーーーーーー!!)
心臓がキャパオーバーな動きをしている。
左右で感触も体温も違う男の人の手。
謙信「ふん」
謙信様の細い指も私の指の間に入り込んできた。
キュッと握られて、また心臓が跳ねた。
(心臓麻痺とかおこさないよね?私の心臓…ガンバレ)
息苦しさを覚えて、本気で心臓発作の心配をしてしまった。