第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
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紺色の無地のロング丈ワンピースに、素足にサンダルで試着室を出た。
リゾートっぽく大ぶりのティアドロップのイヤリングも合わせてみた。
「この生地凄く軽くて良いですね。このまま着て帰っても良いですか?」
店員「はい、わかりました!」
締め付け感ゼロの装いに感動が止まらない。
(すずしーーー、幸せぇ~)
畳んだ着物や襦袢は、汗で湿り気を帯びて重い。
部屋に行ったら風を通しておこう。
店員「このワンピ、程よい透け感もあって涼しげに見えますし、風に揺れると裾が広がって綺麗なんですよ」
裾を持ち上げ、軽く揺らしてみる。
透け感はあるけど裏地があるので足のラインや下着の透けは気にならない。
ウエストには控えめにギャザーが寄っていて、シンプルながら大人っぽい。
店員「タグ取っちゃいますね~」
「おねがいしまーす」
店員さんが背後に回り、背中にぶら下がっていたタグをハサミでチョキっと切った。
店員さんの手首にはじゃらっと音がするくらいブレスレットが重ね付けされている。
黒いサークルがくっきり強調されているカラコンに、まつ毛はまつエクでばっさばさ。髪色は根元はグレーで毛先がペールピンクだ。
光秀「……」
謙信「……」
そんな店員さんを、二人が微妙な面持ちで見ている。
(ぷ、二人の反応がおかしすぎるっ!)
店員「さっき選んだシャツもお似合いでしたよ。あちらは新作なんです」
「アクセントの柄の使い方が斬新でしたよね♬」
店員「そうなんですよ~。私も色違いを持っているんですけど、花の柄が見える度にテンションが上がるって言うか…」
「わかる気がしますー♪」
購入を決めた三人分の衣類を畳んでもらっている間、店員さんと話しに花が咲いた。
呉服屋さんと安土の姫だと会話は堅苦しくなりがちで、こんなふうな軽いやりとりが嬉しい。
店員「この季節に着物なんて大変ですね。撮影か何かですか?」
(え、えーと……誤魔化さなきゃ)
「そうなんですよ~、撮影中に荷物を盗まれてしまって…」
手際よく動いていた店員さんの手が止まった。