第1章 日ノ本一の…(上杉謙信)(R-18)
「違います。ここに来て、生きているうさぎを初めて見たんです。あんなに可愛らしい生き物だとは知らなくて……今後は一生うさぎを食べられないと思います。
父上や兄上がうさぎ狩りに行くといったら引き止めてしまいそうです」
幸村「生きているうさぎを見たことがないって……尚文は結構大事に囲われて育ったんだな。山に行けばそこら中に居るだろうに。謙信様がここに居るからそのうち集まってくるんじゃないのか?」
「謙信様が居るとうさぎが集まってくるのですか?」
私の質問に佐助殿が大きく頷いて、うさぎが居ないか周辺を確認した。
佐助「きっと謙信様にはうさぎを引き寄せるフェロモンが出てるんだ」
ふぇえろもんが何かわからないけど大真面目な顔で言うから吹き出しそうになった。
佐助殿は言動が少し変わっているが面白い方だ。
「そんな特技をお持ちとは知りませんでした」
謙信「尚文」
静かに名前を呼ばれてビクリとなる。
(しまった、調子に乗ってお話をし過ぎたかしら)
怒られることを覚悟で返事をすると、謙信様が私をじっと見ていた。
謙信「俺のことなど気にする必要はない。好きな物は好きと言え」
「えっ、は、はい…ですが、本当にうさぎが好きです。でも猫も好きです。ふわふわしていて…」
佐助「尚文さんは手触りの良い動物が好きなんだな」
「そうかもしれませんね」
空気が和んだところで、幸村様が凄いことをおっしゃった。
幸村「なら謙信様の外套なんてめちゃくちゃ触りたいんじゃないのか?ふわふわだろ?」
「いえ…流石にそれは…」
(なんてことおっしゃるのよ、幸村様はっ!?答え方によっては謙信様の機嫌を損ねちゃうじゃないっ)
ちょっと……そう思ったことはあるけど、言えるはずがない。