第1章 日ノ本一の…(上杉謙信)(R-18)
ごちそうさまでしたと箸を置くと、幸村様が目を丸くした。
幸村「お前、それ本気で言ってるのか?遠慮しないでもっと食べろ」
空になったお皿を奪われて、次々と料理を乗せられた。
「本当にもうお腹がいっぱいで…」
幸村「俺がお前くらいの時は食べても食べても腹が減ったもんだけどな」
ほら、と渡されたお皿はズシリと重い。
「う…ありがとうございます」
(これでもいつもより食べてるんだけど…)
せっかく取ってくれた料理を無下にもできず、少しずつ食べ進める。
幸村「尚文って………なんか、こう…たぬきみたいだな」
にかっと爽やかな笑みを向けられて、箸を落としそうになった。
「たぬき…でございますか?」
(うぅ…あんなにモコモコしているかしら?)
目の周りが微妙に黒っぽいし……ちょっと落ち込みそうになる。
せめてイタチにして欲しい。
佐助「そうかな…尚文さんはもう少し可愛らしいイタチの方が似合ってると思うけど」
(佐助殿……よくぞ言ってくれました)
謙信「イタチはうさぎを食べる。俺は好かん」
「……」
幸村「俺はイタチよりたぬきの方が可愛いと思うけどな」
(つまり幸村様は私のことを可愛いと言ってくださった…のかな)
佐助「俺と幸村の可愛いの感覚が違うみたいだ…。ちなみに尚文さんはどんな動物が好きなの?」
「私ですか?そうですね……」
今まで特別好きな動物はいなかったけど…と考え、ふと庭のうさぎが頭に浮かんだ。
「うさぎが好きです。毛がふわふわして、しっぽも丸くて可愛いですし…」
(また触りたいな)
そういえば梅はあの後どうなったんだろう。
幸村「お前なぁ、小姓のお手本みたいな回答じゃなくて本当に好きな動物を言っていいんだぞ?」
「?」
佐助「君が謙信様に気を使ってうさぎと言ったんじゃないかって幸村は心配してるんだ」
なるほどと納得し、首を振った。