第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
光秀さんのファスナーに手をかけた。
「この溝に、こっちの端を差し込んで…」
綺麗な肌がチラチラ見える。
光秀さんは普段から着物の袷が緩いから見慣れていたつもりだったけど……
(おへそとか、ウエストが……は、肌が、とっても綺麗だっっ……!)
動揺して手元が覚束ない。吐息が震えてしまいそうになるのを極力抑えた。
(あぁ、私だけ見てるなんてもったいない。この興奮を共有できる人が居ないなんて…!)
お針子仲間が居たら一緒にキャーキャー言って、心の栄養分と目の保養にするのに。
「ス、スミマセン、ちょっと緊張しちゃって……」
光秀「俺を相手に何を緊張する必要がある」
「ありますよ!」
(うぅ、早く終わらせよう)
金具がカチリと嵌(はま)り、ファスナーをあげていった。
ジーという音を立てながら、光秀さんの肌が隠れていく。
「はぁ」
(もったいないけど、隠れて安心した…)
これ以上見ていたら失神するところだ。
安堵したのも束の間、ファスナーを上げきったところで光秀さんとバチっと目が合った。
光秀「うしろのこれはどうするんだ?」
艶っぽい笑みを浮かべて、光秀さんがフードを掴んだ。
「日差しが強い時にかぶる帽子です」
試しにかぶってもらおうと、フードに手を伸ばした。
でも試着室の床は一段高い上に、光秀さんは身長が高い。
つま先立ちになって手を伸ばすと、届きそうで届かなかった。
光秀さんが屈んでくれてもまだ届かない。
「よっと、あれ…今度こそ、ほっ!
光秀さん、もうちょっと屈んでください」
(これって恋人にじゃれついているように見えるんじゃ……)
注目を浴びている只中で、じゃれ合っていると勘違いされるのは非常に恥ずかしい。
光秀「ん?届くだろう?」
伸ばした片手を取られ、グイっと引っ張られた。
バランスを崩し、広い胸に飛び込んでしまった。手をついたらついたで、胸板の感触に飛び上がる。
(わ、わぁっっ!さ、触っちゃった!)
その状態になってやっと、目線が合うくらいにまで屈んでくれた。
(絶対わざとだ!)
顔をしかめ、光秀さんの頭にフードをかぶせてあげた。
(今気がついたけど、さすがにフードくらいは自分でかぶれたんじゃない?)