第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
「いえ、それほど…。顔見知り?程度です」
安土の姫と知り合いだなんて、謙信様に迷惑をかける可能性だってあるし、その逆もありだ。
秀吉さんを筆頭に安土の武将達に怒られること間違いないだろう。
それに『お茶をする仲です』なんて、勝手に仲が良いみたいに言うのも気が引けた。
(いつも素っ気なくされるしね…)
私なりに気遣って答えたつもりだったけれど、謙信様が勢いよくこちらを見た。
勢いで乱れた髪が遅れて白い頬にかかった。
(な、なに?)
謙信「顔見知り…程度だと……?よくもそのように言ったな?」
明らかな怒気を含んで睨まれた。
「!?!?」
至近距離で凄まれて背筋が凍りついた。
ひとり慌てていると、光秀さんの唇がニヤリと吊り上がった。
光秀「ふっ、舞は顔見知りとしか思っていないようだな」
「だ、だって、いつも話しかけても素っ気ないじゃないですか。
会話も続かないし、この間は『早く帰れ』って追い払われてしまいました。
話しかけるのはいつも私からですし、謙信様は私のことをうるさく思っているのかと…」
謙信「……」
謙信様の眉間の皺が深くなった。
物言いたげな表情をしていても何も言わないのは、光秀さんを警戒しているのかもしれない。
お店の人がお茶を持ってきて謙信様の前に置いた。
空気が変わったところで、話も変えにかかる。
「お茶請けは頼まなかったんですか?」
謙信「あぁ、舞の顔を見たらすぐ行くつもりだからな」
安土の武将が居ても、私と顔を合わせておきたかったということだろうか。
謙信様は食べかけの香の物と空(から)になっているナシのお皿を見て、薄く笑った。
謙信「この間、太ったから痩せると言っていなかったか?」
口に含んでいた水を吹き出しそうになった。
「ぶっ!そ、それは、二人だけの内緒ですっ!!」
謙信「そう慌てるな。暑い日が続いているからな。塩気と水分は必要だろう」
「わかってるなら言わないでください!」
謙信「舞の顔を見たら無性にからかいたくなっただけだ」
謙信様は怒りをおさめ、どこか愉しげにお茶を飲んでいる。
逆に私はしかめっ面だ。