第14章 9月の夏休み!(謙信様&光秀さん)
「ぅ?ゴホっ!謙信様、お、お久しぶりです。ご機嫌いかがですか?」
慌てたので、おおよそ戦国時代にそぐわない挨拶の仕方をしてしまった。
謙信「機嫌が良さそうに見えるか?くだらんことを聞くな」
「すみません……」
久しぶりに会ったのに相変わらずの塩対応だ。
実は安土の皆には内緒だけど、謙信様とは時々安土城下で会ってお話をしている。
時間が合えばお茶をする仲だ。
どことなく影のある謙信様を放っておけなくて、できれば仲良くなりたいと思っているのに、歩み寄ると引かれてしまう。
親しくなるどころか時々辛辣な言葉で距離を置かれる時もある。
(塩対応されすぎて、なめ〇じなら溶けて縮んでいるとこだよ…)
それでも佐助君や幸村からすれば、女性嫌いの謙信様が私を追い払いもせずお茶をしているというのは驚くべきことらしい。
つれない言葉に肩を落としていると、謙信様が隣に座った。
座った拍子に空気が動き、これまた焚き染められた良い香りがした。
(二人とも良い匂い。私だけ汗臭くて嫌になっちゃうなぁ)
他にも空いている席はあるのに、なんでわざわざここに座ったんだろう。
チラリと見上げると、迫力のある二色の瞳と目が合って、慌てて目を逸らした。
「謙信様。あの、他にも椅子が空いていますよ?」
謙信「久しぶりに会ったのにつれないことを言うな?俺に他所に移れと言うのか?」
「い、いえ。そういうわけではないんですけど…」
(さっき謙信様だってつれなかったじゃないっ!)
こっそり文句を言いながら、自分が臭っていたらどうしようと気が気じゃない。
謙信様も光秀さんと一緒でサラッサラだ。
(光秀さんも謙信様も汗腺がないんじゃないの?)
自分ばかりがテカった顔を晒しているかと思うと今すぐ逃げ出したい。
謙信様から離れたくてとお尻を移動させたところ、すぐに気付かれて距離を縮められた。
(う~~汗臭いって思われたくないのに、なんで近くに来るのかな…)
逃げ場を失くして落ち込んでいると、
光秀「謙信と小娘は親しいのか?」
硬質な声にハッと顔をあげれば、光秀さんが探るように私を見ている。